無形文化財 田宮流居合
 田宮流居合のみのかね=規矩準縄・基本のことがら

 

○ 鞘口の切り方(鯉口の切り方)伝書による

 

◎鞘口内切(かくし切りともいう)
一、抜き出だす前に鞘口を切り置くこと習ひなり。其の様三あり。その内の一なり。
一、此の鞘口の切様は敵手よりくつろげたることの見へざるを欲する仕方なり。故に叉かくし切ともいふ。今鞘口を鯉口と唱ふれども古名に倣ひ爰に鞘口と記す。
此手は復讐等の際鞘手をかけたるまでと他に示し窃かに鞘口を切り辭をかけて、終わると終わざるとの界に速やかに抜きかくる方法の設けなり。

◎鞘口外切(あらわ切りともいふ)
前の鞘口は拇指を鍔にかけず、拇指の爪先を以て鍔の裏をおしくつろげるなり。此の切様は親指を鍔にかくるなり。此の外切は鞘口を切りてくつろげたりとあらわに外に見ゆるやう鍔に親指をかけて押しきるさまなり。

◎鞘口控へ切
拇指を以て鞘口を切り、食指を以て控えたるさまなり。此の鞘口の切りさまは、場合近き所、叉は衆人群衆の地等に在りて抜くべき前の用意のさまなり。間近きときは飛びかかりて我が刀に取り附かざるにも非ざれば此の心得なきときは、柄を取りて抜かるることもあるべし。控への指をかけ置くときは、彼れ我が刀の柄をとるとも我に覚悟あれば如何んとも為すことを得べし。

解釈
 鯉口の切り方に、内切、外切、控え切の三つの方法がある。内切はかくし切りともいい、また外切はあらわ切りともいう。
◎内切は、抜き出す以前に鯉口を切っておく。その切り方は敵にさとられないように鞘手をかけたと見せかけ、ひそかに拇指の先で鍔の裏を押して切っておく方法である。
◎外切は拇指を鍔にかけ、鯉口を切ったと外に見えるようにして押し切る方法である。
◎控え切は拇指で鯉口を切り食指で控えたる方法である。せまい場所とか衆人群衆の場所で抜くべき前の用意の方法である。間近かでは飛びかかって刀を奪われる場合もあるので控えの指をかけておくと安全である。